~注意書き~
※パラレルです。ムー●ンが元ネタになっております。
 既出の、或る谷のお話 前篇の続編となります。
※ムー●ン→ギイです。
※恋愛感情、表現出てきます。ギイタクです。
※ほんのりきわどい表現ある、ので、R15ぐらいで。
※著しく趣味に走りました・・・(;'∀')
      
あ、こりゃー無理っぽい・・・と少しでも思われた方は、とばしてください。
いけそう、もしくは苦笑しながら許せる方は、スクロール↓お願いしますm(_ _)m










「ち、ちがうよ、これは勝手に」

タクミは目を見開いて、胸元を合わせたままブンブンと首を振りました。

「何言ってるの、ギイ。もう、あまり大人をからかわないで」

ギイは無言で、タクミを自分の方に向けました。
何かを隠そうとしているタクミに対する怒りなのか、タクミを襲った人物に対する怒りなのか、よく分からないものが頭を支配していました。
そもそもタクミは自分を”大人”だというけれど、確かに自分と違って自立しているのかもしれないけれど、そうそう年齢に差があるとも思えません。
帽子を取ったタクミの幼さの残る顔は、むしろ庇護欲さえ掻き立てられます。

シャツに手をかけると、迷わず衝動のままに一気に引き裂きました。
もともとボタンがはずれたりしてぼろぼろだったシャツは、無惨にただの布となり果てました。

「ギイ!?何をするんだよ!?」

いきなり服を引き裂かれたタクミは、驚いて硬直していますが、それよりもギイは目の前の光景に震えました。
タクミの胸から露出している鳩尾あたりにかけて、赤い斑点が散らばっていたのです。

本物を見るのは初めてでしたが、それは、大人達が愛を交わしたときにできるものだと、ギイは耳年増の友人達のうわさ話で知っていました。

「誰かと・・・そういうこと、したのか?」
「し、してない」

タクミが首を強く振ります。

「本当に?・・・じゃあこの赤いのは?」

祈るような気持ちでしたが、口調はすっかり詰問でした。
誰ともしていないというならば、タクミはなぜこんな痕跡を付けられているのか・・・?

「これは・・・その、ちょっと・・・そういうことがあって」
「やっぱり誰かとセックスしたんじゃないか!!」

はっきりとした言葉に出して怒鳴ったギイに、タクミがびくりと身を震わせました。
そしてギイに対して、もうこれ以上の誤魔化しは効かないとやっと気が付いたように、おそるおそる話し始めました。

「違うんだ、ギイ・・・これは、無理矢理・・・僕はこんなことするつもりじゃなくて」

話している間に、ぽろぽろとタクミの両眼からきれいな涙がこぼれてきました。

「タ、タクミ。無理矢理って」

驚いたギイは、おろおろとタクミを抱きしめました。
胸の中で、つい先ほどまでは大人だと思いこんでいたタクミが、肩を震わせて泣いています。

「ぼ、僕はイヤだって言ったのに、あの人達が、むりやり僕を・・・」
「タクミ、ごめん、イヤなこと聞いて、ごめん」

必死で宥めますが、内心ギイは穏やかではありません。
その「あの人達」とはいったい誰なのか。
タクミはその忌々しい奴らにいったい何をされてしまったのか。

タクミを傷つけると分かっていながら、さらに問いつめるのを止めることができませんでした。

「タクミ。そいつらはタクミに、何をしたんだよ」
「それは・・・」
「タクミ!」
「・・・ふ、服を脱がされそうになって、抵抗したら・・・羽交い締めにされて、キ、キスとかされそうになって・・・だけど、なんとか逃げてきたんだ・・・」

きっと帽子もそこでなくしてしまったのでしょう。

「最後までは、されなかったの?」

タクミは声もなく小さく頷きます。

「でも、このきれいな体に触れさせたの?」

タクミは動きません。
それはある意味肯定でもありました。

ギイはきつく唇をかみしめました。
自分も知らなかったタクミの体に触れた輩がいる。その事実に腹が煮えくり返りそうで、思わず叫び出しそうでした。

「一体、誰がタクミをそんな目に遭わせたんだ」

怒りで声が震えました。
タクミは首を振るばかりで答えません。

「見なかったのか?それとも言いたくないのか?」

自分でも聞いたことの無いような、低くて冷たい声が出ました。
もし次にタクミがだんまりを通したら、自分は何をするか分からない、と他人事のように考えました。

「・・・見なかったんだ。本当に・・・。全身真っ白な服を着ていて・・・顔は、怖くて見ることができなかった、けど・・・なんか揃いも揃って同じような顔してた気がするから・・・兄弟とかかも。すごくいっぱいいたし。とにかくいきなり連れて行かれたから」

タクミが言うには、旅の途中野宿をしているところで、気が付いたら全身白装束の男達に連れて行かれ、彼らの根城らしきところで襲われかけたということだった。

「とにかく、一瞬の隙をついて、めちゃくちゃに逃げて・・・気が付いたらここにいたんだ」
「やつらは、追ってこなかったの?」
「追ってきたけど。全員一斉にきたから小回りがきかなかったみたい」
「くそ・・・」

やはりあのとき、タクミを一人で行かせるべきではなかったのだ。

「タクミ、こんなところで一人で座って、どうするつもりだったんだよ」
「分からない。すごく怖かったから、バイオリン弾いて心を落ち着けていたところ」
「俺のところに来てくれたんじゃないのか?また、旅に出るのか?」

また一人で行ってしまうつもりなのだろうか。こんなにも怖い目に遭ったというのに。
もしここで自分に出会わなければ、この人はどうするつもりだったんだろう。

「そうだね。僕は旅をすることが目的みたいなものだから・・・どこかあの人達がいないところに」
「じゃあ、俺も連れて行いけよ」
「ギイ?」

なぜ、タクミの肌に触れたであろうその男達に、こんなに腹が立つのか。
なぜ、自分を置いていったタクミにも、こんなにもどかしさを感じるのか。
なぜ、タクミを抱きしめたいと思うのか。

「また俺の知らないところでタクミが襲われているかもしれないと思うと、夜も眠れない。俺も一緒にいく」
「ダメだよ、君は」
「長男とか関係ないだろ!俺が行きたいんだ。行くって決めたんだ、タクミと一緒に」
「でもギイ。僕は一所にはとどまらないよ。落ち着ける家があるわけでもない。君を危険な目に晒すかも知れない」
「いいじゃないか、別に。そのかわりいつも二人で一緒にいたらいいんだ。・・・タクミはイヤなのか?」
「イヤな訳ないよ!」
「じゃあ、なにも問題ない。俺は外の世界を見たいんだ。元からずっとここにいるつもりじゃなかった」

それは本当のことです。
ギイはいつも、何か心掻き立てられるような出来事はないかと探していました。そのおかげで、去年の冬に彗星を追う旅の途中にタクミと出会ったのでした。

「でも、あんなに仲のいい家族なのに」
「確かに家族のことは好きだけど、いつまでも家にいるわけじゃないし、それに・・・もっと楽しいことがあればそっちに行ったっていいだろ?」

もっと楽しいこと、ではなく、本当は家族よりももっと一緒にいたい人、なのですが、それは口には出しませんでした。

「タクミは、俺といたくない訳じゃないんだろ?」
「僕は・・・僕も君と・・・君と一緒にいたい」

まさかタクミからそんな台詞が出てくるとは思わなかったので、ギイの機嫌は一気に浮上しました。
タクミの真意がわからず、それが己の熱意と同じぐらいの強さで一緒にいたい、と思ってくれているのか分からなかったので、うれしかったのです。

「またそいつらが来たら、俺が絶対にタクミを守ってやるから!」
「ギイ、大丈夫だよ。きっと二回も襲われたりしないよ・・・でも、君のご家族は、君が僕と行くことを許してくださるだろうか・・・?」

タクミが不安そうに瞳を揺らします。

ああ、俺はまだ子供なんだ。

ギイは悟りました。
自分がまだ子供だから、まだタクミを十分に安心させて上げられない。
それならば大人になればいい。この人が安心して身も心も任せられるほどの。
もう他の男に襲わせないほどの強い力を持った大人に。

なぜ、タクミの側にいて、こんなもどかしさを感じてしまうのか。
そのたった一つの答えは、いつかこの人に告げなければいけないけれど、今はまだいいと思いました。
タクミが共にいることを許してくれた。
今はそれだけでいい。

「説得はするけれど。家族の意志は関係ないさ、タクミ。俺が行くって決めたんだから」
「ギイ・・・でも・・・」

まだ何か言い募ろうとするタクミに、ギイは顔を近づけました。

「もう黙って」

生まれて初めて、ギイとタクミは、そこを触れ合わせたのでした。





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お待たせいたしました。これでいったんムー●ンパラレル終了です。
注意書きにもありますとおり、著しく趣味に走ったものでしたが、お優しい皆様のコメントと励ましのおかげで、なんとか後篇にこぎつけることができました。
ありがとうございます。
なんか・・・子供から大人への変化みたいなのを書きたいと漠然と考えておりました。
あくまでこちらの拙作では、ギイはもちろん、タクミも実は子供だったということで、その境界線にいる二人を表現したかったのですが・・・
とりあえずギイは自分の気持ちを自覚したようです。
また機会がありましたら、続きを書きたいです。


或る谷のお話 前篇への拍手ありがとうございました。
また、まちさま、しのさま、ちーさま、、三平さま、harukaさま、ラッキーさま、かなさま、rinさま、柚乃さま、コメントありがとうございました。
本当にこのお話を受け入れてくださってありがとうございます!あまつさえ、皆様の妄想力、もとい、想像力が素晴らしすぎて、さらに悶える結果になろうとは(笑)

非公開メッセージもありがとうございます!
(”6/19 20:41” イニシャル”K”の方)
お久しぶりなのに、懐かしいムー●ンをこんな題材に使ってしまい・・・すみません(;´・ω・)
別の谷のお話ということで、楽しんでいただける要素があったらうれしいです!
もしかしたらまた性懲りもなく同じ題材で書かせていただくことがあるかもしれません(;'∀')